ぼくのあお

就活がおわったようです。

ねぎのにおい2

「すいません、昨日の結果からひっくり返すようで。」

 

 

全てを諦め、黒スーツに身を捧げて某大企業の面接を受けてきた帰りのことだった。

 

スピーディーに最終面接で祈られた翌日、御社から内々定の連絡が来た。

 

本来なら喜ぶところなんだろう。やったあと声を上げて笑い、家族に電話して、お祝いをするところなんだろう。だけど、こんなことを言っていいのか分からないけれど、僕が最初に思ったのは「どうしよう…」だった。

 

某大企業の面接兼説明会で、

自分がいるべき場所はやはりエンジニアとしてのここなのかもしれない、

なんて思いつつ、

フリーターもいいな、フリーターになったら何をしようか、

なんて夢想しているところにきた逆転ホームランの知らせは僕を戸惑わせるばかりで、喜ぶことができなかった。

 

落ちた時も悲しくなくて、通った時も嬉しくない。なんだこれは。

僕の感情はいつからこんなに死んだんだ。

 

家に帰ってスーツを脱いで、母と父と軽く話してバイトに行った。居酒屋で身体を動かしていると心が無になるので好きだ。

 

バイトの後、某大企業から次の面接に進んだという案内が来ていた。

川の水が海に流れ込むように、自然に、僕は返事をする。

 

「すいません、今回の選考は辞退します。」

 

何が正解で自分が何を望んでいるのかも見えなくなる四か月だった。

見えなくなったから、最初に僕が望んだ光を信じてあげることにした。

正しいかどうかは分からないけれど、それが一番後悔が少ないんだろう。

 

疲れた身体でベッドに横になった。

再び、ねぎの青臭い匂いが鼻についた。

 

長い付き合いになりそうだなあと思った。