ぼくのあお

就活がおわったようです。

ねぎのにおい

「今回はご縁がありませんで…」

 

電話で無情にそう告げられた時、悲しくもショックでもなくて、心にあったのは

 

「やっぱりそうか」

「疲れたなあ」

だった。

 

あるいは、少しの安心感。

 

6月

二か月間にわたって書類、筆記、一次、二次、三次、とすり抜けてきた御社の最終面接でお祈りをいただき僕の就活が終わった。四か月。長かった。

 

当初は就職浪人なんてことも考えていたがとんでもない。これをもう一回やるなんてクレイジーすぎる。無理だ。就職浪人する人のメンタルどうなってんだ。

 

でもこれで良かったのかなあとも思う。負け惜しみかもしれないけど。

最終面接の直前、頭の中を占めていたのは「なんとかして通りたい」ではなかった。

半分は

「なんでもいいからもう終わりたい」で

もう半分は

「受かってしまったらここで働かなきゃいけないのか」

という変な不安だった。自分で志望して何言ってんだという話だが、とんとん拍子に最終まで進んで急にこの会社で働くことが現実味を帯びてきた時、「えらいとこまで来てしまった」と思った。「どうしよう、通ったら」と思っていた。

 

最終面接では今までのような頭をひねる質問というより普通のことを普通に答えた感じがする。それで落ちたってことは、やる気元気猪木が足りなかったんだろう。物珍しさで通してくれたこれまでとは違う。こいつ会社のために働けるのか。使える奴なのか。そんな目に囲まれた中で喋りながら、自分と相手で噛み合っていないと感じた。最低限の受け答えは出来ている。ただ目の前の人と喋っているつもりなのに、全然喋れている気がしない。何も届いていないし向こうからも何も感じない。

これまでの面接のしっくり感が嘘みたいだった。

「面接は以上です。ありがとうございました。」

ああ、落ちたな、と思った。

 

この一、二週間くらい、謎の匂いに悩まされていた。なんだか自分からネギのような青臭い匂いがする気がするのだ。ずっと臭くてたまらないのに、家族に嗅いでもらっても「なんの匂いもしないよ?いつもの花の香り」と言われシャンプーを変えてもボディソープを変えても、その匂いはついてくる。安心できるのはマスクをしている時だけだったので眠る時もマスクをしていた。

 

昨日、お祈りの連絡をもらって、寒さに震えながら雨の中を帰宅し、着替えてベッドに横になった。あ、マスクを忘れたと思ったがなんの問題もなく僕はそのまま眠りについた。

 

ねぎのにおいはもう、しなかった。